環境技術
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合成有機性廃水の嫌気性分解に及ぼす硫酸イオンの影響に関する研究
宝月 章彦東野 宏昭野中 信一
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1989 年 18 巻 7 号 p. 418-423

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抄録

工場廃水には多量の硫酸イオンを含むことがあり, また, 廃水のpH調整を必要とする場合には経済性の観点から酸中和剤として硫酸を用いることも多いので, 硫酸イオンを含む廃水の処理は重要な課題の一つである.
本実験は合成した有機性廃水を用いて固定床式嫌気性反応槽で連続嫌気性発酵を行い, 徐々に流入廃水中の硫酸イオン濃度を高めて硫酸イオンのメタン発酵に及ぼす影響を調べた.
その結果, 硫酸イオンを20000mg/l含む廃水でも, TOC除去率95%以上を示し, 硫酸イオン自体はメタン発酵に対して阻害作用を示さないことが判った.
これは, 硫酸塩還元菌に対して炭素基質が律速となるために, メタン菌の活性を阻害する硫化水素の発生量が制限され, 嫌気性反応槽内のpHを7付近に保っことにより阻害作用の強い非解離状態の硫化水素の割合が少なくなるためと推定された.

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