環境技術
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ノニオン界面活性剤によるSphaerotilus natansの溶菌機構の検討
北辻 桂松井 三郎
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1999 年 28 巻 9 号 p. 660-667

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抄録

ノニオン界面活性剤ポリオキシエチレンドデシルエーテルによるSphaerotilus natansの溶菌機構について検討した.界面活性剤による溶菌後も, S. natansは溶菌前の菌形を保持していたが, 溶菌後の菌は強く攪拌することによって容易に変形した.溶菌によって, 内部タンパク質は菌体外部に溶出したが, 細胞外膜のエンドトキシンは液中に溶出しなかった.また, 溶菌時の溶質濃度は溶菌には影響を与えず, 菌内容物の溶出は浸透圧変化とは無関係であった.界面活性剤は浸透圧調整機能を阻害するのではなく, 膜のリン脂質に作用を及ぼしていると考えられた.これらのことから, 界面活性剤によるS. natansの溶菌では, 溶菌酵素による溶菌に見られるように菌の表面全体が溶解して破壊されたのではなく, 一部の破壊によって菌内容物が溶出したと推測された.
HLBが同じ値であるノニオン界面活性剤を使用して, 疎水基の違いによるノニオン界面活性剤の溶菌能を比較した.炭素数が12から15の界面活性剤は迅速にS. natansを溶菌したが, 炭素数が27以上の非常に大きな疎水基を持つ界面活性剤はS. natansを全く溶菌しなかった.このことから, 細胞外膜を形成するリン脂質の脂肪鎖よりも鎖長が短い疎水基をもつ界面活性剤の溶菌能力が高いと推測された.

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