環境技術
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イッテルビウムを優先的に吸着するStreptomycessp.の分離及びその吸着特性
ペルティウィニングルム アンバル鈴木 徹岩間 智徳河合 啓一
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2004 年 33 巻 11 号 p. 852-858

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抄録

機能性元素として高度工業化社会を支えている希土類元素の微生物機能を用いる分離回収技術の開発を目指し, 希土類元素のうち, Sc, Ce, Sm及びYbを用い, 低栄養微生物を対象に培地中のこれらの元素を減少させる能力を有する微生物のスクリーニングを行った.その結果, 80%以上の減少能を示した微生物として, Scでは糸状菌1株, Ceでは細菌2株及び放線菌1株, Smでは糸状菌2株, またYbでは放線菌2株がそれぞれ選抜された.Sc, Ce及びSmを減少させた微生物はいずれも供試したすべての希土類元素を減少させ, 希土類元素に対する選択特異1生は認められなかったが, Ybを減少させたYB-2733株はYbのほかTmやLuなど重希土類元素を優先的に減少させた.また, 本菌株は, イオン半径が重希土類元素と似ているYも減少させたことから, 希土類元素のイオン半径を識別していることが窺われた.YB-2733株は形態学的観察並びに16SリボソームDNAの塩基配列の解析結果からStreptomyces beijingaensisの近縁種と推定されたため, 本菌株をStyeptomycessp. YB-2733と命名した.本菌株は乾燥菌体重量1gあたりYbを5~7mg取り込んでおり, 細胞壁画分, 細胞質画分及び細胞膜画分にそれぞれ7%, 9%及び84%存在していた.細胞膜画分のYb含有量は乾燥重量1gあたり22~28mgであった.細胞膜画分中のYbは1 M HCl, 1 M NaOH, 1M NaCl, 0.5%トリトンーX, 0.4%ドデシル硫酸ナトリウムなどでの処理では十分溶離されなかったが, 1mM EDTA処理で容易にかつほぼ完全に溶離された.菌体に取り込まれたYbも1 mM EDTAにより溶離された.さらに, Yb溶離後の菌体や細胞膜画分がYb再吸着能を維持していること, 再吸着されたYbが1 mM EDTAにより再溶離できること及びStyeptomycessp.YB-2733株の菌体や細胞膜画分がYb吸着体として少なくとも5回の繰り返し使用が可能であることを認め, 本菌株がTm, Yb, Lu, Y等の重希土類元素の分離回収に活用可能であることを示すことができた.

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