2013 年 13 巻 p. 23-28
Thalamic Astasia(視床性失立症; 以下TA)は, 一側の視床病変によって前庭神経系障害に類似した立位保持困難の特徴を示し, 通常数日から数週間で自然軽快する症候である. 運動麻痺, 感覚障害, 運動失調は認めず, あっても軽度であるとされる. TAの症例報告は少なく, その原因など不明な部分が多い. 今回, 両側視床の梗塞巣が要因となりTAが遷延したと考えられる症例を経験した. 前庭情報の中枢性投射経路は, 前庭神経核および視床の高位で, 両側性に投射されるという特徴がある. このために, 一側の視床病変ではTAが一過性で回復良好であるのに対し, 両側の視床病変ではTAが遷延すると推察される. 今回の報告は, 視床病変を有する患者の立位バランス障害を検討する資料として, 意義あるものであると言える.