脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
症例報告
Opalski症候群とocular lateropulsionを併発した延髄外側梗塞例:長期経過で仕事復帰に至った症例
加藤 將暉高杉 潤市川 雄大山咲 桂子市川 聖子足立 真理後藤 恭子中村 純子大賀 辰秀井田 雅祥
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2018 年 18 巻 p. 9-18

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抄録

延髄外側の病変により,稀に病巣側上下肢のweakness(Opalski症候群)や,眼球の病巣側への側方突進(ocular lateropulsion: OL)が生じる.Opalski症候群の機序は,通常よりも高位で錐体交叉が生じている者が延髄外側病変を発症した際に,錐体交叉後の皮質脊髄路が延髄外側部で障害を受けることで生じる.また,OLは下小脳脚病変によって生じ,線維連絡により反対側の傍正中橋網様体の活動が低下するため生じる.両者の病巣は近似していながら,併発した症例の報告や,OLの予後や仕事復帰の可否を論じた報告はほとんどない.本研究では,延髄左外側梗塞を発症した30代女性症例(職業:事務員)を示す.第46病日,左上下肢のOpalski症候群を認め,歩行に介助を要した.眼科所見では,OLによる眼球の左共同偏倚が認められ,右への眼球運動は非常に努力的で眼精疲労の強い訴えも聴かれた. 経過にともない左上下肢の筋力は改善し,第140病日(退院時)で屋外歩行は自立した.眼科所見では,徐々にOLの改善が認められるも遷延し,仕事復帰は困難であった.退院後もOLは改善し,発症後13ヶ月で事務職員として復職した.本症例は自立歩行の獲得に 4 ヶ月程度を要し,Opalski症候群例の既報告と同様であった.OLに関しては,重度でも長期経過で改善し仕事復帰まで至る可能性が示された.

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© 2018 脳機能とリハビリテーション研究会
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