脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
短報
物体中心無視に対する没入型仮想現実による手がかり刺激呈示システムの使用経験
萩原 晨功安田 和弘大平 雅弘冨山 美咲齋地 健太岩田 浩康
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 18 巻 p. 25-30

詳細
抄録

物体中心無視は対象物の半側を無視する症状であり,主に側頭葉-頭頂葉ネットワークの損傷と関連することが報告されている.この物体中心無視は,介入手法が十分に確立しておらず,臨床において個別にアプローチすることが難しい.これまでわれわれは没入型仮想現実(immersive virtual reality)の特性を利用して,三次元空間内での半側空間無視への介入手法を提案してきた.本研究では,実生活空間により近い仮想空間内で物体の端に手がかり刺激を呈示することで物体中心無視に介入するシステムを案出した.ここでは,物体中心無視を有する症例を対象として,実行可能性や安全性・症状への影響を検証するために適応を行ない,Apples test,線分二等分課題,線分抹消課題の評価を行なった.機器の適応および実施手順のなかで,めまいや嘔吐感,不快感を訴えることはなく,患者は安全に課題遂行が可能であった.物体中心無視症状の変化として,遠位空間におけるApples testのエラー率,線分二等分課題において改善傾向が認められたが,この傾向は近位空間では認められなかった.本検討で実行可能性が担保されたため,今後,必要となるシステム改変および実験制約を再考し,より多くの被験者を対象に再現性を検証する.

著者関連情報
© 2018 脳機能とリハビリテーション研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top