抄録
目的:低線量・低線量率ガンマ線に対する生物反応に関してその定量的影響評価はほとんど行われていない。本研究では、同質の実験を複数回繰り返すことにより数多くのデータを蓄積し、これらの結果につきメタ・アナリシスを用いて統計的に解析していくことにより、規制値レベルの低線量率放射線の細胞性免疫に対する微弱な影響を高い統計的精度で評価すること目的とした。
方法:C57BL/6マウスに4、21、174μGy/hの各線量率で17日間連続照射を行い、下記の各指標について、メタ・アナリシスを用いて定量的な解析を行った。生物反応として、マウスにアロジェニックな肥満細胞腫P815(2x107個)を腹腔内に移植し、10日目にマウスから脾臓を取り出し、P815に対する抗原特異的細胞傷害活性測定した。細胞傷害活性は% lysis (effector to target ratio = 40)、脾臓細胞1万個当たりのLytic unit (LU)、およびマウス個体当たりのLUで表現した。LUは10%の% lysisを与える活性を1unitと定義して算出した。
結果:同一条件の実験を各5回繰り返し、それらの信頼性の大きさを考慮して観測値の平均を合計した結果、いずれの反応指標についても非照射コントロール群との間に統計的有意差は認められなかった。しかしながら、照射線量の違いに応じて統計的異質性が高くなり、照射の影響が存在することが示唆された。