抄録
【目的】DNA ligase IVはDNA二重鎖切断の非相同末端結合修復系に関与する主要な蛋白の一つである。我々は、RNAi (interference) の癌細胞に対する増殖抑制効果を検討するため、その標的蛋白であるDNA ligase IVの遺伝子発現を特異的に抑制する様に、その遺伝子配列情報を元にデザインした21塩基の二重鎖RNAを合成し、HeLa細胞に導入した。
【方法】DNA ligase IV遺伝子の配列情報を元に合成したsiRNA (small interfering RNA)を導入試薬を用いてHeLa細胞に導入した。定量PCRでmRNAレベルを、Western blotで蛋白レベルを測定することによりDNA ligase IVの発現を調べた後、HeLa細胞の増殖に及ぼすDNA ligase IV siRNAの影響について検討した。
【結果】コントロール細胞と比較して、siRNAを導入したHeLa細胞では、DNA ligase IVのmRNA発現が70%以上低下し、細胞内タンパクレベルについても顕著な低下が認められた。 DNA ligase IV siRNA導入後のHeLa細胞の増殖速度、DNA二重鎖切断や細胞死について検討した結果、DNA ligase IV siRNAを導入した細胞において増殖速度の低下やDNA二重鎖切断の増加が認められ、さらに細胞の形態から30%以上の細胞がネクローシスを起こして死んでいることが明らかとなった。DNA ligasae IV siRNAを導入した細胞における放射線感受性について検討した結果、若干の放射線感受性の増加が認められた。