抄録
Rad51B, Rad51C, Rad51D, XRCC2, XRCC3は相同組換え修復で中心的役割を果たすRad51と20-30%の相同性を有し,これらはRad51パラログとよばれ2つの蛋白質複合体を形成する.Rad51が相同組換え修復の早期から重要な役割を示すのに対し,Rad51パラログも同じく相同組換え修復に対して何らかの重要な役割を担っていると考えられているが,その詳細は未だ不明である.このなかでRad51Bはヒト14番染色体q23-24に位置し,この部位は子宮筋腫などの良性腫瘍においてしばしば染色体転座によって構造異常をおこすことが報告されている.しかし、このこととRad51Bの生物学的意義との関係は不明である.ヒトRad51Bの機能解析をするために,われわれは大腸がん細胞株HCT116においてRad51Bのジーンターゲッティングを行なった.段階的にRad51B+/+/+/-,Rad51B+/+/-/-,Rad51B+/-/-/-を作製したが,これらの細胞はDNA架橋剤などに軽度の感受性を示し,姉妹染色分体交差およびRad51のフォーカス形成の減少を示した.また,中心体数の異常がRad51Bのノックアウトにしたがって段階的に増加し,それに伴って異数体数も増加した.HCT116以外でもヒト線維肉腫細胞株HT1080よりsiRNAを用いてRad51Bを約半量にノックダウンした細胞においても中心体数異常の増加が観察された。 これらの結果より,中心体数と染色体数の安定保持に対Rad51Bの量的効果が存在することが示唆された.