日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-22
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損傷・修復(回復・DNA損傷・修復関連遺伝子[酵素]・遺伝病)
損傷乗り越えDNA合成酵素Rev1による突然変異誘発と発がん感受性について
*梶村 順子吉田 真衣渡辺 敦光本田 浩章増田 雄司朴 金蓮楠 洋一郎林 奉権濱崎 幹也柿沼 志津子島田 義也水野 久美子木南 凌神谷 研二
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抄録
[目的] 放射線は、DNA二重鎖切断、単鎖切断、およびAP部位の生成などのさまざまなゲノム障害を誘発する。我々は、YファミリーDNAポリメラーゼのひとつであるRev1がAP部位の誤りがちなDNA修復に関与することを生化学的に証明した。そこで、本研究では、Rev1の個体における突然変異の生成や発がんでの役割を解明する一助として、Rev1トランスジェニックマウス(Rev1マウス)を作成しその検討を行った。
[方法] Rev1マウスおよび野生型マウス(C57BL/6系統)にN-methyl-N-nitroso urea (MNU)投与と放射線照射を行い、リンパ腫および小腸腫瘍の発生を観察した。
[結果および考察] MNU投与Rev1マウス、野生型マウスともに、胸腺リンパ腫および小腸の腫瘍発生を認めた。Rev1マウスは、野生型マウスと比べ、雌のリンパ腫発生率が有意に高く、雄の小腸腫瘍数が有意に増加していることを認めた。誘発した胸腺リンパ腫の解析では、1)表層マーカーの解析より、さまざまな分化段階のT細胞ががん化していること、2)Ikaros遺伝子、p53遺伝子の点突然変異が起こっていることを明らかにした。さらに、誘発した小腸腫瘍の解析より、導入したRev1遺伝子のコピー数が多いRev1マウス(Homoマウス)では、野生型マウス並びにコピー数が少ないHemiマウスと比較して1)腫瘍の1匹当たりの発生個数が増加していること、2)早期に腫瘍が発生することを明らかにした。以上の結果より、Rev1の機能亢進は、MNUが誘発するリンパ腫と小腸腫瘍の発生を促進することから、Rev1がマウスの発がん感受性を高めること、さらに、小腸での腫瘍発生はRev1の発現量に依存する可能性が示唆された。放射線照射マウスの腫瘍発生については現在検討中である。
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© 2006 日本放射線影響学会
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