抄録
DNA修復には、損傷塩基の多様性に応じて複数の経路が存在する。その中のひとつ、Short-patch BERと呼ばれる塩基除去修復機構は大部分の損傷塩基の修復を行う。DNA glycosylaseによる損傷塩基の除去に始まり、形成された脱塩基部位 (AP site) の5'側でDNA鎖をAP endonuclease (APE) が切断し、Polymerase β (pol β) による5'-deoxyribosephosphateの除去と修復合成およびDNA ligaseによるligationで完了する。XRCC1は触媒活性を持たないが,この経路における足場タンパクであると考えられている。これまでの我々の研究により、DNA glycosylaseのひとつである、ヒトmetylpurin DNA glycosylase (hMPG)がAPEと、APEがpol βとそれぞれ相互作用すること、また、pol β欠損細胞ではglycosylase活性が低下することが明らかにされた。
今回、ヒポキサンチンを含むオリゴヌクレオチドとMPGの濃度がほぼ等しいsingle turnoverの実験において、MPGの除去活性はAPE存在下で最大1.53倍上昇し、pol β存在下においては最大1.43倍上昇した。これはsteady-stateでの実験結果とは異なるものとなった.またAPE、pol βの両者が存在する場合においては、それぞれAPE、pol β単独で存在する場合よりもはるかに大きなMPG活性の上昇がみられた。これらの結果はpol βがMPGの活性に影響を与える可能性を示している。