抄録
塩基除去修復はDNA glycosylaseが初めに損傷塩基を認識することで開始される。酸化損傷塩基に働くDNA glycosylaseであるNEIL1は大腸菌Endonuclease VIIIのホモログとしてヒトやマウスなどで同定されている。マウスNEIL1において、NEIL1よりも塩基配列の短いNEIL1 protein (NCBI AAH43297) mRNA(以下variant1)や、variant1の塩基配列の436番目に停止コドンを持ち、その直後に10塩基のinsertが入ったunnamed protein (NCBI BAC30707) mRNA(以下variant2)が存在することが報告されている。しかし、これまでにこれらvariantの働きに関する報告はない。そこで、本研究では、その発現の意義を明らかにし、これらvariantの組換えタンパクの酵素活性を検討することとした。variant遺伝子をクローニングするために、マウス各種臓器でのNEIL1およびvariantのmRNAの発現動態を調べた。NEIL1およびvariantが増幅されるprimer set 1と、NEIL1、variant1、variant2いずれも増幅されるprimer set 2を用いてRT-PCRを行った。その結果、脳、心臓、肝臓、腎臓で少なくともNEIL1とvariant1のいずれかが発現していることが考えられた。一方、primer set 1で増幅が認められなかった肺、胃、脾臓のmRNAはprimer set 2で増幅され、これらの臓器ではvariant2のみが発現していることが考えられた。現在、variantの高発現系を構築し、組換えタンパクの酸化損傷塩基に対する活性の有無を検討中であり、これらの結果も合わせて報告する。