日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-34
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損傷・修復(回復・DNA損傷・修復関連遺伝子[酵素]・遺伝病)
NBS1による放射線誘発アポトーシスの制御
飯島 健太村中 千寿子小林 純也坂本 修一小松 賢志松浦 伸也一政 祐輔*田内 広
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抄録
ナイミーヘン症候群(Nijmegen breakage syndrome: NBS)は、放射線高感受性や免疫不全、高発がん性を呈する常染色体劣性遺伝病である。我々は、NBSの原因遺伝子NBS1によって制御されるDNA損傷応答機構を解析するために、ニワトリDT40細胞を用いたNBS1ノックアウト細胞を作成し、NBS1が放射線などで生じるDNA二重鎖切断の相同組換え修復に必須であることを明らかにしている。今回、その後のNBS1ノックアウト細胞の表現型解析の過程でNBS1がp53とは独立に放射線誘発アポトーシスを制御するという事象を発見した。この事象はp53欠損のDT40細胞に限ったものではなく、NBS1患者細胞においても放射線照射後に起きるアポトーシスが著しく抑制され、その抑制の程度はAT細胞よりも強いことがわかり、ATM-p53経路とは異なる放射線誘発アポトーシス制御機構があることが強く示唆された。そこで、SV40でトランスフォームしたNBS患者細胞を用いて、X線照射後におけるアポトーシス誘導関連タンパクの質的および量的な変化をウエスタンブロットや免疫沈降によって解析した。その結果、Chk2の活性化といったアポトーシス誘導の初期過程のみならず、アポトーシス発動の終盤においてもNBS1が何らかの制御をかけていることを示すデータが得られた。このことから、NBS1はこれまで知られているような放射線で生じたDNA二重鎖切断の修復やS期チェックポイント制御のみならず、発がん抑制にも寄与する異常細胞の除去も制御していることが推測された。
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© 2006 日本放射線影響学会
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