日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-39
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損傷・修復(回復・DNA損傷・修復関連遺伝子[酵素]・遺伝病)
In situ 可視化解析による癌抑制遺伝子産物p53のDNA損傷応答機構
*北澤 諭中嶋 敏松永 司加藤 俊介石岡 千加史安井 明
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キーワード: p53, DNA修復, 可視化解析
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抄録
癌抑制遺伝子産物p53はDNAに損傷を受けると活性化し,細胞周期の停止やアポトーシスを誘導することで細胞の癌化を防ぐ.しかし,p53が損傷したDNAにどのように応答し,癌を防いでいるかの多くは不明である.我々はDNA損傷に対してp53が応答する機構とその役割を解明することを目的として,p53のin situ 可視化解析を試みた.顕微鏡のレンズを通してレーザー照射することにより,細胞の核内に局所的に種々の損傷を誘発し,その損傷に対するp53の動的な現象を調べた.p53-GFP融合蛋白質をヒト細胞で発現させレーザーを照射したところ,レーザー照射部位にp53がすばやく集積することを見出した.p53のN末端或いはC末端を削ったp53欠失変異体を作製し,集積に必要なp53の最小領域を解析すると,102-354番目のアミノ酸の領域がp53の集積に必要とされる最小領域で,この中にはDNA結合ドメインと四量体化ドメインが含まれていた.野生型p53に比べDNA結合活性が低下するp53点変異体や,4量体を形成できないp53点変異体の集積を解析したところ,4量体形成をとれないp53点変異体(L330H,R337H,K351Eなど)は野生型p53と同様に集積したのに対して,DNA結合活性が低下するp53点変異体(V143A,R175H,R273Hなど)はレーザー照射部位に集積することができなかった.以上よりp53の集積はp53の四量体形成ではなく,DNA結合能力に依存していることが分かった.又,癌患者において高頻度で変異が確認されているホットスポット内のp53点変異体のほとんどで,DNA損傷への集積が見られなかった.このことより,p53がDNA損傷部位に集積することと細胞の癌化との関係が示唆された.今後,損傷部位へのp53の集積がp53の活性化などに果たす役割を調べる予定である.
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© 2006 日本放射線影響学会
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