日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-42
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損傷・修復(マイクロビーム・放射光・紫外線)
軟X線照射により誘起されるCu-ATSM導入低酸素細胞の染色体損傷
*新見 文香笠石 陽平梶 芳朗小林 克己藤林 靖久湯川 雅枝磯 弘之石川 剛弘高倉 かほる
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抄録
最近銅を含むPET薬剤として開発されたCu-ATSMは、低酸素組織や細胞に集積することが知られている。本研究ではこのCu-ATSMの性質を利用して低酸素細胞に銅を取り込ませ、これに銅K殻吸収端単色X線を照射し、その染色体損傷を調べた。
3000nM Cu-ATSMを培養液に加え、ヒト培養細胞(GM05389、HSG)を通常の酸素条件と低酸素条件でそれぞれ10時間培養した。その後、単色X線照射を高エネルギー加速器機構の放射光施設において行なった。用いたX線のエネルギーは銅K殻吸収端を挟む(9.027keV(CuK-H)と8.973keV(CuK-L))とした。放射線照射直後の細胞への影響は、カリクリンAを用いたPCC法(未成熟染色体凝縮法)を用い、その染色体損傷を調べた。培養細胞の染色体損傷としてbreaks/gapsならびにisochromatid breaksを調べた。
また、培養細胞への銅元素の取り込みは放射線医学研究所においてPIXE分析法(particle-induced x-ray emission spectroscopy)を用いて確認した。
普通の酸素条件で培養された時と比較して、低酸素下で培養された細胞はCu-ATSMをより多く取り込むことが分かった。Cu-ATSMを取り込んだ培養細胞を単色X線照射すると、その染色体損傷はCu-ATSMを取り込んでいないものより多く現れた。また、CuK-Hで照射されたものはCuK-L照射のものよりも、染色体損傷の度合いは大きくなった。
培養細胞中に銅が取り込まれている時に染色体損傷が増加していることから、細胞内に取り込まれた銅原子のイオン化や励起という物理的現象と染色体損傷増感という生物的減少の関係が明らかになった。
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© 2006 日本放射線影響学会
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