日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-43
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損傷・修復(マイクロビーム・放射光・紫外線)
重イオン照射細胞の培養上清による染色体損傷とバイスタンダー効果におけるDNA-PK csの役割
*高倉 かほる金杉 勇一浜田 信行和田 成一舟山 知夫坂下 哲哉柿崎 竹彦小林 泰彦
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抄録
   本研究では、重イオンビームで照射された培養細胞の培養液を、まったく照射をうけていない他の細胞に与えることで,あたかも細胞が直接照射されたかのように損傷を受けると言う、培養上清によるバイスタンダー効果を調べることを試みた。照射効果としては、化学PCC法により染色体損傷を調べた。また、DNA 損傷の修復酵素として良く知られるDNA-PK が、バイスタンダー効果にどのように関わっているかを見るために、DNA-PKcs の阻害剤であるLY294002(LY) を用いて、バイスタンダー効果への影響を調べた。用いた細胞はヒト正常線維芽細胞GM05389 である。細胞は照射の24時間前に1.5 x 106cells /60 mm dishで蒔かれ、照射を直接受けるドナー細胞、照射された細胞の培養液(上清)に浸されるレシピエント細胞として、それぞれ用いられた。照射は、TIARAイオンビーム照射装置を用いて、20Neイオン(260 MeV, 437 keV/microm), 10 Gy の照射を行った。ドナー細胞を照射して培養液を加え、24時間培養した後に上清をレシピエント細胞に移し、その後12時間培養してからレシピエント細胞の染色体損傷を、PCC法により調べた。染色体1本に切断が見られるchromatid breaks と、同じ場所の染色体2本に切断が見られるisochromatid breaks をレシピエント細胞について調べたところ、明らかなバイスタンダ-効果が確認された。レシピエント細胞をLYで処理した場合は、処理しなかった場合に比べて、バイスタンダー効果は増大したが、ドナー細胞をLYで処理してから照射し、上清をレシピエント細胞に加えて、レシピエント細胞におけるバイスタンダー効果を調べたところ、LY処理を行わなかった場合と比べて、バイスタンダー効果は明らかに減少し、バイスタンダ効果におけるDNA-PKcsの関与が示唆された 。
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© 2006 日本放射線影響学会
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