日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-54
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放射線応答(活性酸素・アポトーシス・細胞周期)
低線量放射線による細胞影響へのインスリン修飾作用の解析
*中島 徹夫根井 充
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抄録
前回の大会で我々はヒト乳がん由来細胞株(MCF7)を用いた低線量放射線による細胞の生存率において0.25Gy照射単独では変化を生じさせないが、インスリン存在下では生存率が有意に減少すること、さらにそこにプロテインキナーゼC(PKC)関連情報伝達系が介在することを示唆する結果を示した。低線量放射線によるシグナルの誘起とインスリンの修飾効果を調べることは、低線量放射線による細胞内シグナル経路を解析するためのよいモデルとなりうる。今回は細胞生存への影響について総生細胞数の測定に基づく増殖率を指標としたMTSアッセイだけでなくコロニー形成率アッセイで調べるとともに各種阻害剤を用いることでインスリンの増感効果を解析した。細胞イノキュレーション後5時間、24時間でMTSアッセイ法とコロニー形成率アッセイ法を用いてインスリンによる細胞の放射線への増感効果を調べた。5時間後ではMTSアッセイ法では増感効果が得られたが、コロニー形成率では変化は認められなかった。これらのことはインスリン効果が細胞の増殖抑制にあることを示唆するものである。さらに24時間後でもMTSアッセイにおける細胞増殖率では5時間後と同様にインスリンによる抑制効果が見られた。5時間後では細胞は接着したのみの状態であるが、24時間後では細胞の伸張や細胞間接着も起こりつつある。これらの2つの時間で同様の結果が見られたことは0.25Gy照射の細胞増殖率へのインシュリンの修飾作用は細胞の接着や伸張などの影響は受けないことを示唆する。阻害剤実験においては細胞培養5時間後では細胞の接着への阻害剤処理の影響が大きく解析が行えないため、細胞の接着、伸張が安定する24時間後での阻害剤処理実験を試みた。インスリン情報伝達系と関連のあるPKCやPI3キナーゼなどへの阻害剤を用いた実験結果ととも細胞内タンパク質のリン酸化変化の時間的変化についての結果も報告する。
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© 2006 日本放射線影響学会
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