日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-53
会議情報

放射線応答(活性酸素・アポトーシス・細胞周期)
C. elegans の化学走性神経回路モデルによるストレス応答シミュレーション
*鈴木 芳代坂下 哲哉辻 敏夫深本 花菜浜田 信行和田 成一原 孝光柿崎 竹彦小林 泰彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
神経系のモデル生物として知られる線虫(C. elegans)は、化学物質に応じた誘引、忌避行動(化学走性)を示す。また、水溶性の誘引物質であるNaClとエサの有無を組み合わせて条件付けすると、エサがない状態でNaClにさらした場合では、NaClを忌避するように化学走性が変化する連合学習能を有している。最近では、連合学習行動と酸化ストレスや老化の関係が報告されるなど、線虫を用いた「学習」と「ストレス」の関係に関わる研究が始められつつある。このような中で、われわれは、NaClとエサとの連合学習の最中にガンマ線照射による一種のストレスを加えると、(1)NaClに対する化学走性の攪乱が生じること、一方、(2)揮発性の誘引物質であるベンズアルデヒドに対する化学走性は変化しないことを見出した。水溶性と揮発性の誘引物質を受容する感覚ニューロンはそれぞれ異なっており、複数の介在ニューロンと運動ニューロンに接続している。ところが、いくつかの介在ニューロンにはこれらの感覚ニューロンが共に接続しているため、NaClおよびベンズアルデヒドに対する化学走性の神経回路には、重複する部分がある。したがって、ガンマ線照射では、NaClの情報伝達に関与する神経回路上のいずれかの部位に変化が生じるものと予想されるが、放射線ストレスによる変化が神経回路上のどの部位に生じるのかについては、現在までのところ明らかになっていない。そこで、本研究では、化学走性に関わる神経回路上で放射線ストレスによって変化する部位を探るために、実生物の神経接続のデータベースをもとに、化学走性に関与するニューロンおよび接続を再現する神経回路モデルを作成した。そして、照射前後の応答をコンピュータ上でシミュレートすることで、神経回路上に生じる変化の予測を試みた。本発表では、予備的に得られた結果について議論する。
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top