日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-56
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放射線応答(活性酸素・アポトーシス・細胞周期)
p53セリン20のリン酸化によるシグナル伝達
*岡市 協生鬼塚 浩徳長谷川 祥子井手 美和奥村 寛
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キーワード: p53, リン酸化, シグナル伝達
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抄録
p53は放射線照射によりリン酸化されて、下流遺伝子のWaf-1やBaxなどの遺伝子転写の調節を行い、細胞の増殖停止やアポトーシス誘導を行っていると考えられているが、リン酸化の役割についてはまだわからない点も多い。そこで、注目されているSer20部位のリン酸化によるシグナル伝達について、変異遺伝子導入細胞を使いDNAチップで調べた。
[方法]
1) 細胞:p53遺伝子を欠失しているヒト肺非小細胞癌由来H1299細胞。
2)p53変異遺伝子:Ser 20をアラニンに置換する変異(S20A)とSer 20をアスパラギン酸に置換する擬似的リン酸化変異(S20D)を持つp53遺伝子をLacSwitch発現調節ベクターに組込んで細胞に導入。
3) DNAチップ解析:DNAチップ研究所のAceGene Human Oligo Chip 30K(約3万遺伝子を搭載)を用いた。
[結果と考察]
正常p53とS20A遺伝子導入細胞では、細胞増殖阻害が見られたが、S20D遺伝子導入細胞では細胞増殖阻害が見られなかった。DNAマイクロアレイを用いて、S20D遺伝子導入細胞での誘導遺伝子を調べたところ、多様な遺伝子が誘導されていた。正常p53遺伝子導入細胞で見られた細胞周期阻害遺伝子以外にS20A遺伝子導入細胞では、サイクリンキナーゼが誘導されていた。また、正常p53遺伝子導入細胞で見られたアポトーシス関連遺伝子の誘導は、S20D遺伝子導入細胞ではほとんど見られなかった。これらのことが、正常p53遺伝子導入細胞とS20D遺伝子導入細胞での細胞増殖の違いになって現れたのではないかと考えられる。また、S20D遺伝子導入細胞では、放射線により誘導されてくるp53の下流遺伝子の誘導は見られなかった。このことより、放射線によるp53の活性化には、S20のリン酸化だけでなく他の部位の修飾が必要であると考えられる。
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© 2006 日本放射線影響学会
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