日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-57
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放射線応答(活性酸素・アポトーシス・細胞周期)
ATM特異的阻害によるDNA損傷シグナル増幅のG1アレストにおける役割の解明
*山内 基弘鈴木 啓司山本 将史内田 素行新村 浩一児玉 靖司渡邉 正己
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キーワード: ATM, フォーカス, G1アレスト
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抄録
【背景・目的】
 放射線照射後、核内に形成されたSer1981リン酸化ATM蛋白質のフォーカスは、照射後時間経過とともに減少するが、残存するフォーカスはそのサイズが増大、すなわち成長する。さらに直径1.6 μm以上にまで成長したリン酸化ATMフォーカスを持つG1期の細胞は、S期への進行が阻害される。このことからリン酸化ATMフォーカスの成長は、DNA損傷シグナルがG1アレストの誘導に必要な量まで増幅するのに重要であることが考えられる。そこで本研究ではATM特異的阻害剤を用いて残存するリン酸化ATMフォーカスの成長を抑制し、G1アレストに対する影響を明らかにすることを目的とした。
【材料・方法】
 正常ヒト二倍体細胞を接触阻害によりG0期に同調後、1 GyのX線を照射し、すぐに細胞を回収して0.5 mM BrdU含有培地を入れた35 mmディッシュにまきなおすことにより同調を解除した。またこの時同時にATM阻害剤KU55933を最終濃度10 μMとなるよう培地に添加した。照射24時間後に細胞を固定し、Ser1981リン酸化ATMおよびBrdUに対する特異的抗体を用いた蛍光免疫染色を行った。
【結果】
 非照射群における同調解除24時間後のBrdU陽性細胞の割合は、阻害剤非処理群で32%、また阻害剤処理群で38%であった。1 Gy照射群では阻害剤非処理群で8%にまで減少したのに対し、阻害剤処理群では25%が依然陽性であった。この時、阻害剤非処理群では20%程度の細胞で直径1.6 μm以上の大きなリン酸化ATMフォーカスが観察されたのに対し、阻害剤処理群では直径0.5 μm以下の小さなフォーカスがほとんどであった。
【結論】
 X線照射後残存するSer1981リン酸化ATMフォーカスは成長することによりシグナルを増幅し、G1アレストを誘導していることが明らかになった。
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© 2006 日本放射線影響学会
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