日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-65
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放射線応答(活性酸素・アポトーシス・細胞周期)
モデル生物線虫Cエレガンスの生殖細胞における放射線応答の研究
*森 ちひろ池永 貴彦杉本 朋子太齋 久美子坂下 哲哉舟山 知夫柿崎 竹彦浜田 信行和田 成一小林 泰彦一石 英一郎齋藤 るみ子東谷 篤志
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抄録
電離放射線の照射は、DNA二重鎖切断を生じさせる。それに対し、生物はDNA修復システムを有している。また、損傷が激しく修復不可能な際、後生生物ではアポトーシスが誘導される。線虫C. elegansに過剰な放射線照射をすると、生殖腺内の減数分裂前期パキテン期の細胞でアポトーシスが誘導される。ヒトの原ガン遺伝子c-Abl1はTyrosine kinaseとしてDNA修復の制御に関与している。さらに、線虫のabl-1欠損変異株においては、放射線照射後、生殖腺でのアポトーシスが野生株に比べ高頻度に誘導されることから、アポトーシス誘導に対して負に制御することが示唆されてきた。そこで本研究では、線虫DNAマイクロアレイを用いて、野生株とabl-1にγ線を100Gy照射し、放射線応答とabl-1の制御下にある遺伝子群の網羅的な発現解析を行った。野生株において、照射3時間後に発現が2倍以上増加した遺伝子は1313あり、その内117遺伝子はabl-1欠損変異体において、さらに1.4倍以上に増加した。その中には、アポトーシス誘導シグナルのBH3-only protein遺伝子egl-1並びにced-13が含まれていた。また、cytochrome P450のsubfamilyの発現は、野生株において増加していたが、abl-1欠損変異体では著しく低下していた。一方、原子力機構の重イオンマイクロビーム装置により、生殖腺内を局所照射した結果、生殖腺パキテン期の部位に照射したときにのみアポトーシスは誘導され、組織特異的な放射線応答の研究に同技術が有効であることが認められた。本発表ではバイスタンダー効果も含め、線虫の放射線応答について広く議論したい。
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© 2006 日本放射線影響学会
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