日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-69
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放射線生物学(低線量・低線量率)
長期低線量率照射したヒト早発性老化症候群モデルマウスの寿命延長効果に及ぼす作用
*野村 崇治
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抄録
寿命延長効果には抗酸化機能の亢進やインスリン抵抗性亢進など様々な報告が挙げられている。これまで我々はマウスに低線量率照射を行うと抗酸化機能が亢進することを明らかにした。また我々はII型糖尿病モデルマウスに低線量率ガンマ線(0.70 mGy/hr)を長期間連続照射することで、一部のマウスに尿糖値が正常レベルに戻り、また寿命延長効果があることを示した。尿糖値の低下について、インスリン分泌機能の維持が寄与したと推察した。ところでヒト早発性老化症候群モデルマウス(klotho)マウスにおいて、インスリン感受性の亢進が寿命延長効果に寄与する報告がある。そこで我々は、低線量率照射が寿命延長効果に及ぼす作用の解明として、klothoマウス(メス)を用いて低線量率照射を行い膵臓の抗酸化機能の変動、および血中インスリン量の変動を測定した。線源に137-Csのガンマ線を用いた。寿命の測定は、0.70 mGy/hrの線量率で28日齢より死亡まで連続照射を行った。膵臓のSOD活性および血中インスリン量は、28日齢より1〜6週間照射を行い測定した。
照射により顕著に寿命の延長効果が認められ、平均寿命は非照射群が約56日であるのに対し照射群が約64日であった。また照射群では、これまで生存日数の報告例のない100日齢を越すマウスも生じた。SODのうちMn-SODの活性は照射群で増加し、有意に高くなることを確認した。また膵臓の組織の病理的検査により、照射群は非照射群に比べて損傷の程度が少ないことが明らかとなった。一方血中インスリンの量は、非照射群は加齢と共に減少するのに対し、照射群はその減少の程度が抑えられた。
これより低線量率照射でもklothoマウスの寿命延長効果が認められた。またその効果は、加齢による酸化的損傷の抑制がインスリン分泌機能を維持し、このインスリンをシグナルとした効果によるものと推察した。
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© 2006 日本放射線影響学会
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