抄録
【目的】_I_型のアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎は、異物に対する免疫過剰により発症する。紫外線B(UVB)は免疫系へ影響を及ぼすことが知られているが、アトピー性皮膚炎への影響およびその機序は明らかとされていない。そこで本研究では、アトピー疾患モデルマウスにUVBを照射し影響を検討した。
【方法】6-12週齢のNC/Ngaマウスの右耳に週2回(総計12回)ダニ抗原を皮下投与し、アトピー性皮膚炎を発症させた。また、照射群にはマウスの背中(2cm×2cm)に0.1J/cm2のUVBを週2回(総計12回)照射した。皮膚炎の進行は、右耳の厚さ、アトピースコアおよびIgE抗体濃度変化(ELISA法)により評価した。38日目に脾細胞を採取し、サイトカイン(IL-4、IFN-γ、IL-10、IL-12)産生量をELISA法にて測定した。腹腔マクロファージ産生TNF-α濃度およびNO産生量はそれぞれELISA法および酸化窒素分析装置で測定した。
【結果および考察】UVB照射群では被照射群に比べ、右耳の厚さ、アトピースコアおよびIgE産生量の有意な増加が認められた。また、UVB照射群では、脾細胞のTh2産生サイトカイン(IL-4、IL-10)濃度が上昇し、Th1/Th2バランスはTh2タイプへ傾いた。さらに、UVB照射により腹腔マクロファージ産生サイトカインであるTNF-α濃度の上昇、それに伴い細胞障害性を持つNO産生量が有意に増加した。これらの結果から、UVB照射による疾患の憎悪化が認められ、照射により誘導された種々のサイトカインの関与が示唆された。