抄録
近年、腫瘍治療目的の粒子線照射設備を持つ施設が増えている。我々は、いくつかの 施設の陽子線ビームの効果をマウス小腸クリプト生残数を指標に調べてきたので、その結果を報告する。また、ドイツGSIのビームと放医研HIMACのビームの比較も同様の手法を用いて行ったので、あわせて報告する。
治療施設と照射条件
若狭湾エネルギー研究センター 180MeV/u陽子線 6cmSOBP エントランスとSOBP中心部
対照 福井医科大学 Linac(X線)4MeV/u
静岡がんセンター 190MeV/u陽子線 6cmSOBP エントランスとSOBP中心部
対照 静岡がんセンターLinac(X線)6MeV/u
GSI
290MeV/u炭素線 6cmSOBPのproximal, middle, distal
HIMAC
290MeV/u炭素線 6cmSOBPのproximal, middle, distal
結果
RBEは、D0, D30, D10においてのRBEの平均から求めた。 若狭湾エネルギー研究センターの陽子線では、入射平坦部でのRBEは0.98、SOBP中心部でのRBEは1.13という結果を得た。静岡がんセンターの陽子線では、入射平坦部でのRBEは0.99、SOBP中心部でのRBEは1.05という結果を得た。いずれにおいても、RBEは1に近い数値であり、入射平坦部よりSOBP中心部の方が僅かに高い値であった。 GSIとHIMACとの比較では、GSIの炭素線によるD0, D30, D10を1として、HIMAC炭素線によるD0, D30, D10の相対値を求めたところ、HIMAC炭素線の生物効果がGSIより5%強いことが分かった。