日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P2-6
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放射線影響(染色体異常・発がん・遺伝的不安定性)
生涯飼育放射線照射マウスに発生した腫瘍の免疫組織学的特性について
*吉田 緑柿沼 志津子西村 まゆみ島田 義也
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キーワード: 免疫組織化学, PCNA, p53
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抄録
放射線照射動物の生涯飼育試験において生存日数に関連する病理診断は重要である。同試験では多様な腫瘍が観察されるが、一部の腫瘍を除き発生する多くの腫瘍の診断や特性には不明な点が多く残されている。今回我々は、放射線照射生涯飼育試験(炭素線、X線、0.4から1.6Gy4回分別照射)に供したB6C3F1雌マウスに発生した肺、卵巣、子宮および間葉系の固形腫瘍(ホルマリン固定・パラフィン包埋材料、それぞれ10、19、3、19例)について、腫瘍の細胞増殖活性とp53関連抗体に対する免疫組織化学染色の発現パターンを検索した。組織学的に肺は全て分化型腺癌、卵巣は顆粒膜細胞腫(悪性含む)14、管状腺腫4、癌1、子宮は内膜腺癌3、間葉系は線維肉腫6、血管肉腫5、平滑筋肉腫4、悪性神経鞘腫2、横紋筋肉腫・組織球肉腫各1と診断した。肺腺癌と顆粒膜細胞腫は両放射線照射群、子宮癌は炭素線群、間葉系腫瘍と管状腺腫は全ての群より得られた。PCNA染色の結果、子宮癌、卵巣・間葉系腫瘍では腫瘍細胞が全域で強陽性を示したが、肺腺癌では陽性細胞数が少なかった。高いPCNA陽性率を示した一部の腫瘍は、肺、リンパ節、肝臓などに転移していた。p53抗体(wild、mutated cell双方を検出)に対しては特徴が認められ、両照射群を含む7例の顆粒膜細胞腫が陽性細胞を示し、いずれもPCNA強陽性腫瘍であった。対照群の線維肉腫および血管肉腫各1例も強陽性を示した。その他の腫瘍にp53陽性細胞は認められなかった。p53陽性腫瘍についてp21およびMDM2抗体の免疫組織化学染色を行ったがいずれも陰性であった。以上の結果より、卵巣、子宮および皮下腫瘍は高い細胞増殖活性を示し、それが転移に関連する可能性も考えられた。肺腫瘍の成長はかなり緩やかなであると考えられた。またp53の発現は腫瘍の組織分類によって異なり、卵巣顆粒膜細胞腫の発癌過程にはp53蛋白の関与が示唆された。
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© 2006 日本放射線影響学会
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