日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS3-1
会議情報

損傷ヌクレオチドによる遺伝情報不安定性誘発とその制御
RNA 前駆体の酸化による遺伝情報撹乱
*紙谷 浩之
著者情報
キーワード: 活性酸素, RNA 前駆体, 変異
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 酸化的 DNA 損傷に加えて酸化的損傷 DNA 前駆体も放射線による変異誘発に大きく寄与していると考えられる。同様に RNA 前駆体の酸化も DNA にコードされた遺伝情報を撹乱する可能性がある [1]。我々は、酸化的損傷 RNA 前駆体が転写産物に与える影響を試験管内転写反応を用いて解析した。
 モデル RNA ポリメラーゼとして T7 RNA ポリメラーゼを、酸化的損傷 RNA 前駆体として 8-hydroxy-GTP(8-OH-GTP)と 2-hydroxy-ATP(2-OH-ATP)を用いた。完全鎖長に達した転写産物量とcDNAに変換後の配列を分析したところ、(1) 酸化的損傷 RNA 前駆体の存在により転写産物量が減少すること、(2) 8-OH-GTPによりT→G(U→G)及びT→C(U→C)変異が誘発されること、(3) 2-OH-ATP によりT→C(U→C)変異が誘発されることを見出した。
 以上の結果は、放射線による酸化的損傷 RNA 前駆体の生成が転写に対して量的・質的に影響を与えて遺伝情報を撹乱している可能性を示唆している。
[1] Taddei et al. Science 278, 128 (1997)
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top