日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS3-3
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損傷ヌクレオチドによる遺伝情報不安定性誘発とその制御
8-OH-dGTPの哺乳動物細胞における変異誘発
*佐藤 和哉河井 一明葛西 宏原島 秀吉紙谷 浩之
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抄録
【目的】 放射線等が原因でDNA中に生じる8-ヒドロキシグアニンは、C だけでなくAとも誤った塩基対を形成し、高い変異原性を有する。一方、そのDNA前駆体である8-ヒドロキシ-dGTP(8-OH-dGTP)はDNAポリメラーゼによってAに対して誤って取り込まれることでA:T→C:Gトランスバージョンを引き起こすことがin vitroにおいて示されている。そこで本研究では、生細胞に直接8-OH-dGTPを導入することにより、その変異誘発について調べた。

【方法】 COS-7細胞にSV40 oriおよび標的遺伝子supFを有するプラスミドを8-OH-dGTPと共にLipofectamine試薬を用いて導入した。48 hr後にSV40 T Antigen依存的に複製されたDNAを回収して大腸菌に導入し、supF変異体率の測定およびシーケンシングによる変異スペクトルの解析を行った。

【結果】 Totalの変異体率は8-OH-dGTPおよびコントロールとして同量のdGTPを導入した場合で差はみられなかった(3.91および3.89×10-5)。しかしながら生じた変異について解析した結果、欠失および挿入変異の割合はdGTPでは66%であったのに対し8-OH-dGTPを導入した場合では22%にすぎなかった。A:T→C:GトランスバージョンはdGTP導入では検出されなかった(0/174: <0.6%)のに対し、8-OH-dGTP導入の場合は58%(83/144)を占めた。

【結論】 本研究により、培養細胞に三リン酸体の損傷ヌクレオチドを直接導入し、変異の誘発を解析する系が確立した。8-OH-dGTPの導入により、COS-7細胞においてA:T→C:Gトランスバージョンが高頻度に誘発されることが示された。したがって、生体内においても生成した8-OH-dGTPは変異の誘発に関与すると考えられる。

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© 2006 日本放射線影響学会
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