日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS5-7
会議情報

低線量・低線量率放射線の生物影響の分子的解析
低線量/低線量率照射による放射線適応応答の誘導へのNOラジカルの寄与
*松本 英樹大塚 健介冨田 雅典平山 亮一古澤 佳也畑下 昌範林 幸子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 放射線に対する応答により細胞から分泌される内因性物質への二次的な応答が非被ばく細胞に誘導されることが明らかとなり、放射線誘発バイスタンダー効果として注目を集めている。内因性NOラジカルが関与する高および低LET放射線に対する正常および腫瘍組織の放射線適応応答について幾つかの知見が得られたので報告する。
【材料および方法】
(1)材料:ヒトp53欠損非小細胞肺癌(H1299)細胞に正常型p53を導入した細胞(H1299/wtp53)を使用した。
(2)X線照射:X線照射装置(HITEX150)を用い、予備照射として0.02 Gy(1 mA, 130 kVp)、本照射として0 - 6 Gy(5 mA, 130 kVp)照射した。
(3)重粒子線照射:炭素線(290 MeV/u, mono, LET 70 KeV/µm)を予備照射として0.02 Gy、本照射として0 - 3 Gy照射した。
(4)生存率の測定:コロニー形成法により行った。
【結果】
(1)X線照射による放射線適応応答の誘導:0.02 GyのX線予備照射により顕著な適応応答(X線放射線抵抗性)が予備照射後3 - 12時間目に認められた。この適応応答の誘導はcarboxy-PTIO (c-PTIO) の添加により部分的に抑制された。
(2)重粒子炭素炭素線照射による放射線適応応答の誘導:0.02 Gyの炭素線予備照射により顕著な適応応答(炭素線線抵抗性)が予備照射後3 - 24時間目に認められた。この適応応答の誘導はc-PTIOの添加により部分的に抑制された。
【考察・結論】
 ヒト培養癌細胞において、低LET放射線のみならず高LET放射線である重粒子炭素線によっても予めの低線量照射によって放射線適応応答が誘導されること、およびその誘導にNOラジカルが寄与していることが示された。これらの放射線適応応答の誘導にはNOラジカルを介する放射線誘発バイスタンダー効果が大きく関与していることが示唆される。
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top