抄録
塩基除去修復(BER)の中間産物である脱塩基部位(AP sites)は同時に最も多く生じる損傷で、突然変異や細胞死を引き起こす。AP sitesを定量することは、DNA修復機構を解析する上で極めて重要と考えられる。われわれは近年、AP sitesのアルデヒドに特異的に反応するプローブ化学化合物、Aldehyde Reactive Probe(ARP)を合成し、これによるAP sitesの定量法を確立した。本研究では、5-[Nユ-(2-Aminooxyacetamidoethyl) thioureido] fluorescein(FARP-1)により、DNAを抽出することなく、細胞内AP sitesを直接定量する方法を確立し、これを用いてBERの細胞周期依存性を検討した。G1およびS期のHeLa RC-355同調細胞DNA中のmethylmethanesulfonate(MMS)誘発AP sitesを ARP法により定量した。また、対数増殖期のRC355細胞中のG1およびS期細胞中の誘発AP sitesを PIとFARP-1の二重染色法後、FCMにより定量した。DNA中の誘発AP sitesはG1期の方が僅かに多かったが、差は有意ではなかった。一方、FARP-1 法による細胞あたりのAP sitesは期待通りS期の方が多く、同法の有用性が確認された。また、methoxyamine前処理の濃度に依存してシグナルが減少したことから、FARP-1の反応特異性が確認された。