本稿の目的は情報化の進展にともなう大学生の就職活動の変化と省外での就職の実状等について,山東省済南市を事例に検討することである.済南市の大学生の就職活動の変化として,省政府が導入した求職支援のためのウェブシステムである就職情報システムを利用する人が多くなっていることが挙げられる.その一方で,就職活動の手段として,現在でも大学内で開催される企業説明会等の従来の活動手段を利用する人も多く,就職情報システム以外の民間の求人情報サイトやSNS を就職活動の手段として重視する人は少ないことが分かった.また調査結果からは,就職活動の範囲に関しては省内に限定される傾向がみられた.求職者の多くは省内出身者であるものの,省外の就職先も選択肢としている人も多いため,就職情報システムでは省内での求人のみが掲載されることは課題である.しかしながら,それでも求職者の多くが同システムを利用しており,求職者は同システムに掲載されている求人数の多さや情報の詳細さ,信頼性を重視している点が指摘できる.