日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS8-10
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マイクロビームを用いた研究の進展
スダレ状放射光マイクロビームの生物作用とがん治療
*篠原 邦夫八木 直人
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抄録
1950年代後半に、宇宙線の生物影響を調べる目的で、25μm幅の重水素ビームのマウス脳への照射実験がなされ、1mm幅のビームの場合に比べて組織傷害が極端に小さいことが明らかにされた。Slatkinらは、同様の検討を放射光X線で行い、ビーム幅20μm、ビーム間隔200μmのスダレ状の並行平板ビームとしてラット脳に照射した。その結果ビーム内1回線量625Gy以下では、全く放射線障害が検出されないと報告した[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 8783(1995)]。その後この現象を放射線治療に応用する試みがなされ、ビーム幅25μm、ビーム間隔100μm でラット脳腫瘍の治療を試み625Gyの直交2方向、各1回照射で、担がん動物に大幅な延命効果があるとの報告が出た[Laissue et al, Int. J. Cancer 78, 654(1998)]。
本治療法は、放射光の高い指向性を利用し、これまでの概念とは異なる照射方法をとっており、腫瘍消滅の機構は不明であるが、生物学的にも治療手法としても新しい問題を提起しているものと注目を集めている。
ここでは、ワークショップの背景となる本研究の現状について文献をもとに整理して紹介し、ワークショップにおける議論の活性化の糧となるよう話題提供をしたい。
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© 2006 日本放射線影響学会
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