抄録
モデル生物の1つである線虫Cエレガンスは、多細胞真核生物として全ゲノム解読が最初に行われるとともに、様々な遺伝的突然変異体の単離やRNA干渉法による網羅的な逆遺伝学的解析がなされている。さらに、世代交代期間が約3日と短く、発生過程における全細胞系譜が明らかにされていることが特徴としてあげられる。私たちは、成虫においてもその体長が約1 mmと比較的小さく、透明で各細胞・組織を低倍率の顕微鏡下で観察できることから、マイクロビームを用いた局部的な放射線照射の生物影響を調べる上でも格好の材料と考えている。そこで、TIARAの重イオンマイクロビーム照射装置を用いて、主にCエレガンスの生殖細胞系における放射線応答に関する研究を展開してきた。本発表では、これまでの実験系とその成果、生殖腺幹細胞における細胞周期の停止とアポトーシスについて紹介するとともに、今後の方向性についても議論したい。