日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W8R-383
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化学の目で見る放射線生物学
ガン治療用重粒子線による水の放射線分解に関する研究: (3) ケイ光法を用いた OH 収量高感度測定の試み
*前山 拓哉山下 真一BALDACCHINO Gerard勝村 庸介室屋 裕佐田口 光正木村 敦村上 健
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抄録
放射線の間接効果の主な担い手が OH ラジカル (•OH) であることや重粒子線が高い生物学的効果を有することから、重粒子線照射時に中性条件下で •OH 収量を測定することは有意義と言え、本研究ではこれに感度の高いケイ光法を適用することを目的とした。
Coumarin は •OH を捕捉し、そのうち 5 % 程度がケイ光物質 7-hydroxy-coumarin になり、数 10 nM の高感度で測定できることが 60Co γ 線を用いて報告されている。しかし、溶解度の低さから捕捉時間スケールがトラック内反応よりも遅い。そこで本研究では溶解度の高い類似化合物 Coumarin-3-carboxylic acid (CCA) を用いた。水分解ラジカルとの反応性や反応機構は Coumarin に比べてあまり知られていないため、事前に電子線パルスを用いた過渡吸収スペクトル測定や 60Co γ線照射時の最終生成物の分析を行った結果、CCA は •OH とだけでなく水和電子とも反応性が高く拡散律速であること、7OH-CCA 生成には溶存酸素の有無によって 2 つの異なる経路があること、•OH の時間挙動推定には開放系が妥当であること、などが分かった。
次いで、放医研 HIMAC において GeV 級のエネルギーを有する重粒子線 (12C6+28Si14+40Ar18+56Fe26+) をこの条件で照射し、逆相クロマトグラフィにより最終生成物を分離し、365 nm で励起、445 nm でケイ光検出し、7OH-CCA を定量した。LET 増加および時間の進行に伴い 7OH-CCA 収量が減少し、このことからトラック内反応の増加および進行が確認できた。•OH を捕捉した CCA のうち 5 % が 7OH-CCA となると仮定して •OH 収量も評価した結果、文献値とよい一致を示し、重粒子線照射時の •OH 収量の指標に適用できる目処が立った。今後は反応機構のさらに詳細について把握する必要がある。
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© 2007 日本放射線影響学会
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