日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W8R-382
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化学の目で見る放射線生物学
パルスラジオリシス法による脳梗塞用薬剤エダラボンの酸化性ラジカルとの反応性の研究
*端 邦樹勝村 庸介林 銘章室屋 裕佐工藤 久明中川 恵一中川 秀彦
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抄録
エダラボン(3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one, RadiCut®)は、脳虚血‐再灌流時において発生する活性酸素を除去するラジカルスカベンジャーであり、2001年から国内で使用されている。その反応性を調べるため、パルスラジオリシス法を用いてエダラボン水溶液中に様々なラジカルを選択的に発生させ、エダラボンとラジカルとの反応性を直接的に観測した。反応させたラジカルは·OH、N3·、Br2·-、SO4·-、CCl3O2·-である。この測定によって、エダラボンとラジカルとの反応速度定数を算出し、生成する反応中間体の吸収スペクトルを得た。N3·、Br2·-、SO4·-、CCl3O2·-のエダラボンの酸化による中間生成物は同一の吸収スペクトルを示し、吸収ピークはλmax = 345 nm (ε345nm = 2600 M-1cm-1)となった。水素(または一電子)引き抜き反応によるエダラボンラジカルの生成と考えられる。一方、·OHとの反応では、吸収ピークはλmax = 320 nm (ε320nm = 4900 M-1cm-1)となり、特異的なスペクトルを示した。·OHと他の酸化性ラジカルとでは異なる反応中間体を生成しているということが示唆される。これは、酸素脱気下において·OHが二重結合への付加反応を起こしているものと考えられる。反応速度定数は、·OH、N3·、Br2·-、SO4·-、CCl3O2·-それぞれについて8.5×109、5.4×109、6×108、5.1×108 M-1s-1と得られた。
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© 2007 日本放射線影響学会
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