抄録
DNA損傷の中でもDNAの単鎖切断は最も発生頻度の高い損傷で、この損傷が重なった場合やそのまま複製に至ると二重鎖切断をもたらし細胞死やゲノム不安定性の原因となる。我々はレーザーマイクロ照射による蛋白質の動態解析とプロテオミクスやデータベース解析、あるいはヒト核蛋白質の集積スクリーニングを組み合わせ、DNA損傷に応答する新規蛋白質の同定と機能解析から、DNA単鎖切断や二重鎖切断がヒト細胞中でどのように修復されるかを解析している。この報告では、最近我々が発見した新規蛋白質とそれらの機能を紹介する。PALF蛋白質はFHAドメインとCYRドメインと名付けた新規のZinc-finger likeドメインを持ち、このCYRドメインがAPエンドヌクレアーゼと3’-5’エキソヌクレアーゼの活性を持ち、単鎖切断部位に直ちに集積し、ポリADPリボースポリメラーゼ1(PARP1)を活性化し、修復を進行させる。PALFはまた、二重鎖切断のNHEJに関わるKU86やLigase4およびリン酸化されたXRCC4に結合し、二重鎖切断の末端を平滑化する能力を持つ。このような解析とは別に、レーザーマイクロ照射を用いて損傷集積蛋白質のスクリーニングする事により、全く新規の損傷応答蛋白質を検索することが出来る。そのようにして得られた新規二重鎖切断応答蛋白質についても報告する。
参考文献
(1) Kanno, S, Kuzuoka, H, Sasao, S, Hong, Z, Lan, L, Nakajima, S, and Yasui A. A novel human AP endonuclease with conserved zinc-finger-like motifs involved in DNA strand break responses, EMBO J. 26, 2094-2103, 2007
(2) Nakajima, S, Lan, L, Kanno, S, Usami, N, Kobayashi, K, Mori, M, Shiomi, T, and Yasui, A. Replication-dependent and -independent responses of RAD18 to DNA damage in human cells. J. Biol. Chem. 281, 34687-34695, 2006