抄録
【目的】我々はX 線、重粒子線Si-490MeV/u、Fe-200MeV/uとFe-500MeV/u を照射したヒト正常線維芽細胞のquiescent G0期およびproliferating G1期細胞の染色体修復kineticsを比較検討した。また照射後12時間修復したG0 期とG1期細胞染色体修復の差異FISH法を用いて検討した。
【材料と方法】ヒト正常線維芽細胞であるAG1522 を用い、X線、Si、Feイオンをそれぞれ2 Gy 照射した。照射後37℃で修復させた細胞(G0 )と照射後直ちにsubcultureした細胞(G1)の染色体断片数を経時的に測定した。 染色体異常はFISH法にて解析をした。
【結果・考察】低LET 及び高LET 照射ではsubcultureの有無に関わらず細胞の染色体修復kineticsはほぼ同じであり、照射後12時間までに90%以上の修復が認められた。またFISH法における染色体異常において低LET照射直後にsubcultureして修復された細胞では、照射後subculture せずにG0のままで12時間修復した細胞と比較し、異常頻度の増加が認められた。しかし高LET照射(145keV/μm 、440keV/μm:Fe)では染色体異常頻度に差が見られなかった。すなわち、LET が高くなるとG0 期と G1期ともに誤修復は増加し、LET 145keV/umで検出頻度がピークに達した。以上の結果は低LETではNHEJ(Non-Homologous End Joining)を介するrepair はG0 期の方がG1 期より正確であることを示唆し、高LET ではG0 、G1いずれもNHEJは同様にerror proneであることを示唆された。