日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: AO-008
会議情報

DNA損傷と染色体異常
減数分裂期特異的な相同組換え蛋白質の発癌への関与
*細谷 紀子半谷 匠西村 智子宮川 清
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
悪性腫瘍においては多種類の染色体異常が観察される。中でも異数体や倍数体などの数的異常は極めて高頻度に観察され、その分子機構を解明することは悪性腫瘍の本態を知る上で重要である。一方、シナプトネマ複合体は、減数分裂期に特異的に発現して相同染色体の対合や交叉・組換えに重要な役割を果たす、減数分裂時の染色体の挙動の正確な制御のための必要不可欠な構造である。その主要構成タンパク質の1つであるSCP1については、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病などにおいて異所性に発現していることが報告されており、腫瘍と精巣に選択的に発現する抗原(腫瘍/精巣抗原)である可能性が示唆されてきた。しかしながら、シナプトネマ構造構成蛋白質の体細胞における異所性発現が発癌に果たす役割は不明である。今回、我々は、別のシナプトネマ構造構成蛋白質の1つである SCP3に関して、腫瘍細胞での発現解析と体細胞での異所性発現による機能解析を行った。SCP3蛋白は様々な組織由来の腫瘍細胞株において発現していた。また、網膜色素上皮細胞に SCP3蛋白を強制発現させた細胞株を樹立したところ、SCP3安定発現株においては、野生株に比べ、細胞増殖速度の低下、一倍体、三倍体、四倍体などの染色体の数的異常の頻度の増加、ならびに、放射線に対する感受性の亢進を認めた。以上より、減数分裂期特異的なシナプトネマ構造構成蛋白質の体細胞における制御の異常が、染色体不安定性を来たし、発癌に関与する可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top