日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: AP-203
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DNA損傷と染色体異常
インスリン分泌細胞に対する強定常磁場の影響
*櫻井 智徳宮越 順二
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抄録
【目的】現在、日本においては、臨床で使用されているMRI装置の定常磁場の磁束密度は1.5~3テスラであるが、米国ではすでに6テスラのMRI装置が臨床に応用されている。さらに、実験レベルでは、9テスラを超える装置が検討され始めている。このような、強定常磁場の普及に伴い、世界保健機関は環境保健基準(EHC)の作成を実施したが、強磁場の生体影響に関する研究は非常に少なく、検討の基礎になる論文が少ない問題も残っていた。一方、生活習慣の欧米化に伴い、日本における糖尿病罹患率は増加の一途を辿っている。本研究では、近年曝露機会が増えているにもかかわらず基本的なデータが不足している強定常磁場の生体影響に関して、罹患率の増加が著しい糖尿病の発症に密接に関連したインスリン分泌細胞への影響という観点から検討した。
【方法】グルコース刺激応答性を維持しているインスリン分泌細胞株INS-1を、磁束密度3, 6または10テスラの強定常磁場曝露下で30分、1時間または2時間培養し、曝露直後のミトコンドリア活性、細胞内インスリン含量、培養中の培地へのインスリン分泌量を、磁束密度0.5マイクロテスラ以下(擬似曝露)の場合と比較して評価した。
【結果】3, 6または10テスラいずれの磁束密度においても、最長2時間の強定常磁場曝露においては、ミトコンドリア活性、細胞内インスリン含量に変化が見られなかった。培養中の培地へのインスリン分泌量は、強定常磁場曝露によってわずかながらの減少が見られた。これらのことから、強定常磁場がインスリン分泌細胞に与える影響は小さいものと考えられる。
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© 2007 日本放射線影響学会
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