抄録
【目的】IVR (interventional radiology) は、手術と比べて低侵襲であるとされているが、近年の施行症例数の増加に伴い、エックス線による放射線障害が問題となっている。そこで、頭頸部IVRにおける患者と術者の被ばく線量を測定し、併せて放射線皮膚障害発生の実態を明らかにする事を目的とした。
【対象と方法】対象は2002年3月から2004年10月まで頭頸部IVRを施行した患者28例と診断目的の検査のみを行った4例の計32例。内訳は15才から76才(中央値61.5才)の男性11例と女性21例。線量測定は蛍光ガラス線量計(Dose Ace; 旭テクノガラス)を用い、3本を1つにまとめて患者の頭頸部と体幹部に計47か所設置した。X線管球の管電圧、全照射時間、全透視時間、DSAの全シリーズ数と全フレーム数、DAP(面積線量計)の値を記録した。
【結果】IVR施行28例の最大ESD (皮膚透過線量)は1788±1259 mGy (mean±SD)であり、28例の平均では右側頭部が1124±1349 mGyと最も高い値を示した。最大ESDと全照射時間、DAP値、DSAシリーズ数、DSAフレーム数の相関は、それぞれr2 = 0.3622 (P < 0.001)、r2 = 0.6422 (P < 0.001)、 r2 = 0.3955 (P < 0.001)、r2 = 0.7729 (P < 0.001)となった。術者のESDは確定的影響のしきい線量値以下であった。
【結論】IVRにおける患者のESDとその体表面上の分布を示した。この記録をもとに、同じ場所への過度な集中を避けるよう、あらかじめエックス線の当てる方向を計画することができ、また医師は患者に対して被ばくの可能性とその対処法を具体的に説明することで、より良い信頼関係を築くことが出来る。