日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BP-225
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突然変異と発癌の機構
X線を全身照射したBALB/cおよびC57BL/6マウスにおける小核網状赤血球のフローサイトメトリーによる解析:遺伝的不安定性が照射後長期にわたって生体内で持続する証拠
*濱崎 幹也今井 一枝大西 寿林 奉権中地 敬楠 洋一郎
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抄録

[目的] 放射線誘発遺伝的不安定性の研究は、染色体異常や遺伝子突然変異などの遺伝子障害が照射を受けた細胞の子孫細胞に後発的に現れることを指標として、試験管内で精力的に進められている。しかしながら、生体内での研究による放射線誘発遺伝的不安定性の証拠は、かなり限られたものである。それは、多数の細胞を客観的かつ簡便に解析可能な信頼性のある測定系が確立されていないことによると考えられる。本研究では、フローサイトメトリーを用いてX線全身照射したマウスの末梢血小核網状赤血球を定量し、造血系における放射線感受性ならびに誘発された遺伝的不安定性の評価を行った。 [方法] X線照射したBALB/cおよびC57BL/6雌マウスの末梢血を採取し、小核網状赤血球の頻度をリトロン社MicroFlowキットを用いてフローサイトメトリーにて測定した。 [成績] 生体内における造血系の放射線感受性とゲノム不安定性を評価する目的で、X線全身照射したマウス末梢血中の小核を有する網状赤血球の頻度を、フローサイトメトリーを用いて測定した。放射線照射2日後の急性効果は0.1グレイもの低線量で検出可能であり、線量効果はBALB/c マウスのほうが C57BL/6マウスよりも高く (p<0.001)、小核頻度はそれぞれ3.0 (p=0.002)および2.3倍 (p=0.002)増加していた。X線2.5グレイ照射したマウスでは、照射後1年を経ても、小核を有する網状赤血球の頻度に有意な増加を認めた。すなわち、BALB/c および C57BL/6マウスでそれぞれ1.6 (p=0.035)および1.3倍 (p=0.039)の増加が認められた。また、この放射線遅延効果においても有意なマウス系統差 (p=0.028)がみられた。 [結論] マウスの造血系に対する放射線の遅延効果は生体内で長期間持続し、放射線で誘発されるゲノム不安定性の感受性にマウス系統差が存在する。

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© 2007 日本放射線影響学会
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