日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BP-226
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突然変異と発癌の機構
DNA修復因子NBS1の中心体維持における新規役割
*島田 幹男小林 純也小松 賢志
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キーワード: NBS1, 中心体, 染色体不安定性
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抄録

 ナイミーヘン症候群(NBS)は、高発癌性、染色体不安定性及び免疫不全といった重篤な臨床症状を呈する遺伝病である。NBS患者由来のNBS細胞は放射線感受性を示し、原因遺伝子NBS1はDNA修復及びDNA合成(S期)チェックポイントに関与する事が知られている。また、NBS細胞は染色体不安定性を示すがその理由として現在までのところ、NBS1遺伝子欠損によるDNA修復能破綻が挙げられている。     今回、我々はNBS1が中心体と共局在している事を発見し、NBS1がDNA修復のみならず中心体の制御にも関与している可能性を見いだした。中心体は1組の中心小体と中心体周辺物質からなり、細胞周期を通して微小管形成中心として機能しており、M期には双極紡錘体の極を形成する中心器官となる。複製異常や細胞質分裂の失敗による生じる中心体の過剰状態は多極紡錘体の原因となり、染色体の不等分配を起こす。よって、中心体の数の制御は染色体分配の重要なポイントであるといえる。放射線を照射した細胞では中心体の過剰複製が起こるといった現象が報告されている。また、最近ではDNA損傷応答に関わるBRCA1が染色体の維持に重要である事が報告され、他にも多数のDNA修復因子が中心体に局在する事が分かってきている。特にDNA損傷応答因子のチェックポイントが中心対制御と何らかの関わりがあると考えられるが、いまだその詳細は不明である。  今回、NBS1の中心体との共局在からNBS1が中心体制御に関与している可能性が示唆されたため、siRNAによるNBS1のノックダウン実験及びNBS1のドメイン解析を中心に中心体制御の機構を解析した結果を報告する。

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© 2007 日本放射線影響学会
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