日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CO-028
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放射線応答とシグナル伝達
分裂酵母における電離放射線により誘発される遅発性組換え
*竹田 純植松 哲生松本 智裕丹羽 太貫
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抄録
電離放射線はゲノムにDSBを誘発する。ダメージ応答チェックポイントにより、損傷が修復されるまで細胞周期は停止する。興味深いことに、損傷を受けた細胞のクローンは遺伝的不安定性を示しやすい。これは、損傷の発生が何かしらのメカニズムによって記憶されていることを示唆している。我々は、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを用い、遅発性組換えの分子機構を研究している。500 Gy までのX線照射によって、200 bpのリピートを持つマーカーの組換頻度は線量依存的に1.0 × 10-2%から約10 × 10-2%まで上昇し、8-10世代持続した。この遅発性組換えは活性酸素などのバイスタンダー因子には依存しなかった。それに加え、単一のDSBがトランスに組換えを誘導すること、Rad22(Rad52ホモログ)のフォーカス形成率が遅発性組換えと平行して、高く保たれることが明らかになった。さらにHiCEP法によって遺伝子発現プロファイルを比較したところ、少なくとも45の転写産物が組換え頻度の上昇とともに発現量を変化させること、100以上の転写産物が少なくとも13世代にわたって発現量を変化させ続けることも明らかになった。これらの結果は修復完了後においてダメージ記憶が存在することと、転写制御の大規模な変化や遅発性組換えはその記憶の下流で制御されていることを示唆している。
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© 2007 日本放射線影響学会
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