日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CP-114
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放射線応答とシグナル伝達
PI-3 キナーゼSMG1によるp53制御
*石垣 靖人
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抄録

PI-3キナーゼファミリーの一つである SMG-1は、ATMやATRと類似の構造を持ちながらNMD (Nonsense-mediated mRNA decay) または mRNA サーベイランスと呼ばれる mRNA の品質管理機構において必須な因子の一つであるとされてきた。NMDとは、DNA にナンセンス変異が生じた場合や、スプライシング異常などによるフレームシフトによって 翻訳領域に新たな終止コドンが生じた場合に、その 変異mRNA を選択的に分解してしまうシステムのことである。日本人に高頻度で観察される色素性乾皮症A群やWerner症候群などの劣性遺伝疾患における原因遺伝子の発現消失は、多くの場合NMDによって引き起こされている。最近SMG1がATMやATRと同様にDNA傷害センサーとして機能する可能性や、SMG1の結合タンパク質でやはりNMD因子のひとつであるUpf1ヘリケースも細胞周期進行に関わることが報告され、RNAとゲノムの品質管理にこれらの因子が共通に働いていると考えられている。本研究では、p53発現制御に対する SMG-1 の役割を明らかにしていくために、RNAi 法を用いた解析を行った。SMG-1 配列に特異的な siRNA を作製し、ヒト培養細胞に導入したところ、p53タンパク質の発現がコントロール細胞に対して低下していることが明らかになった。興味深いことに、プロテアソーム阻害剤を処理した時に蓄積するp53量にも明らかな低下が認められた。これらの結果はp53の量的制御にSMG1が関わることを示唆すると考えられ、その制御機構についても報告する予定である。

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© 2007 日本放射線影響学会
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