日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: S6-4
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宇宙環境における生物影響研究
宇宙放射線研究の再構築とその展望
*大西 武雄高橋 昭久
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抄録

宇宙研究は大きな転換期を迎えようとしている。「月へ、火星へ、その向こうへ」をテーマに。今後展開されていく2010年からのISSでは半年に渡る長期間の宇宙実験も対象になるであろう。しかし、生物学・医学からの提案ではその研究材料のメンテナンスが同時に要求されるので実験がしやすくなるともいいがたい。長期間の実験がいかに適しているかの目標が要求されることとなる。地上研究では宇宙を見立てた放射線照射装置が開発されて、宇宙研究に大いに利用できる。宇宙実験が曝される環境は宇宙放射線と微小重力である。宇宙実験で得られた実験結果は常に、その2つの環境を念頭に入れなければならない。月への長期宇宙滞在を念頭に入れた宇宙放射線研究のアプローチをまとめてみる。
(1)宇宙放射線による生体影響研究として、1.ISSを利用した長期低線量率宇宙放射線被ばくの生物影響研究、2.セントリフュージを利用した微小重力と放射線の相互作用による生物影響研究、3.曝露部を利用した太陽紫外線を含む放射線による生物影響研究
(2)地上における研究として、1.重粒子線照射装置を利用した高LET放射線の生物影響研究、2.低線量率放射線照射装置を利用した線量率効果の生物影響研究、3.マイクロビーム照射装置を利用したバイスタンダー効果などの生物影響研究
(3) 宇宙放射線生物影響として、1.分子レベルからのアプローチ、2.細胞レベルからのアプローチ、3.組織・器官・個体レベルからのアプローチ、4.集団レベルからのアプローチ
(4)宇宙放射線防護研究として、1.被ばく線量の計測生物学的効果比、2.線質係数に関する研究、3.宇宙放射線被ばく予報システムの開発、4.放射線防護法の開発
これらの状況の中での宇宙実験に注目される最新の日本における宇宙実験計画とともに、来年に計画されている我々の宇宙放射線研究の実験計画を示す。

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© 2007 日本放射線影響学会
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