日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: S7-1
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粒子線の医学利用ー基礎から臨床まで
重粒子線治療のための生物・臨床反応モデルとその検証
*松藤 成弘金井 達明加瀬 優紀宮本 忠昭馬場 雅行鎌田 正加藤 博敏山田 滋溝江 純悦辻井 博彦
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抄録

炭素線をはじめとする重粒子線は、Bragg peakに特徴づけられる飛程終端近傍での線量の局所集中性と、それを修飾する生物学的効果によって、優れた腫瘍制御効果が期待される。米国LBLで先駆的に試みられた重粒子線治療は、以降放医研や兵庫県立粒子線治療センター、またドイツGSIにおける炭素線による治療照射へと拡大し、その期待が現実のものとなりつつある。 周知の通り、X線や陽子線では生物・臨床効果は吸収線量に対して線形に比例するとみなされる一方、重粒子線では線エネルギー付与(LET)や吸収線量の多寡等に伴ってその効果は大きく変化する。治療では標的に含まれる腫瘍細胞を一様に制御することが求められることから、重粒子線治療の実施に際してはその効果を臨床上十分な精度で管理できるモデルの確立が不可欠となる。  一般には、重粒子線の吸収線量(Gy)に、特有の非線形な生物効果の度合いを示す生物学的効果比(RBE)を乗じて、X線で同等の効果が得られると想定される臨床線量(GyE)に変換、管理される。しかし、重粒子線の作用機序には未だ解明されていない部分も少なくなく、RBEについても統一されたモデルは存在しない。放医研では、ヒト耳下腺がん由来の培養細胞(HSG)の応答特性と、重粒子線と同様高LET放射線である速中性子線の臨床効果とを組み合わせたモデルを用いている。一方ドイツでは、X線に対する腫瘍の応答特性を、重粒子線の形成する微視的な線量分布(トラック構造)で修飾するLEM(Local Effect Model)が用いられている。これらモデルやエンドポイントの違いに基づき、同じGyEで示される臨床線量が直接比較できない現状にある。本講演では、これらモデルの特徴及び臨床線量分布の相互比較の試みを示すと共に、臨床結果の解析を通じてRBEモデルの検証を行い、重粒子線治療の特徴についても述べる。

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© 2007 日本放射線影響学会
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