日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: EP-145
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放射線効果の修飾因子
ラット腸管細胞株IEC-6におけるUrsodeoxycholic acid (UDCA)の放射線障害防護作用
*崔 星田村 泰治明石 真言
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抄録
高線量放射線被ばくは重篤な腸管粘膜細胞の障害、腸死などによって死亡をもたらす。しかし、いまだに有効な放射線防護剤はまだ確立されていない。Ursodeoxycholic acid(UDCA)は、動物性生薬熊胆(ゆうたん)の薬効主成分であり、鎮痛、利胆、消炎、解毒などの作用を有し、肝胆疾患などに広く用いられている。最近、UDCAがmitochondria膜透過性遷移と活性酸素抑制やGlutathione合成酵素であるmethionine adenosyltransferase活性増強によってapoptosisを抑制することが報告されている。しかし、UDCAの放射線被ばくによる腸管細胞の保護作用については未知である。今回、ラット正常腸管細胞株IEC-6を用い、UDCAの高線量放射線被ばくによる放射線防護作用及びその機序について検討した。IEC-6細胞は、5%FCS含有DMEM培地を用いて培養し、それぞれ50、100、200μMのUDCAを単独あるいはMEK、p38、PI3Kキナーゼなどの阻害剤と混合処理し、高線量γ線(20 Gy)照射前後のUDCAのapoptosisへの影響をHoechst染色法やWestern blot法にて検討した。高線量γ線照射前或いは後のUDCA投与はIEC-6細胞のapoptosisを濃度依存的に抑制した。UDCAはMEK阻害剤との存在下によりさらにapoptosisを抑制したが、PI3Kキナーゼ阻害剤との混合投与はapoptosisを増強させた。UDCAはMAPK経路のERKのリン酸化を抑制し、Aktのリン酸化を促進したが、p38のリン酸化には影響しなかった。また、UDCAはBcl-2やBcl-xL発現を増強し、caspase 9などの活性化を抑制したが、Baxやcytochrome c発現への影響は認められなかった。これらのことより、UDCAはMEK/ERK経路の抑制やPI3K/Akt 経路の活性化及びcaspase/mitochondria経路抑制によってラット腸管細胞の放射線誘導apoptosisを抑制したと考えられる。
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© 2007 日本放射線影響学会
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