日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: S7-3
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粒子線の医学利用ー基礎から臨床まで
陽子線治療の生物から臨床 -悪性神経膠腫に対する取り組み-
*坪井 康次
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抄録
 現在の筑波大学陽子線医学利用研究センターは2001年より治療を開始した。旧センターでの治療症例数を含めると現在までに約1800例の治療を行ってきたが、今回は悪性神経膠腫を対象とした生物学的および臨床研究につき解説する。
膠芽腫は放射線感受性が低く極めて予後不良な悪性髄内腫瘍である。生物学的には半数以上でp53の変異を認め、放射線抵抗性を示すことが知られている。In vitroでの検討では、膠芽腫細胞は照射後に特にG2ブロックが著明となり、アポトーシスは起きにくい。また、DNA-PKの活性が高く、膠芽腫細胞株による検討ではその活性は放射線抵抗性と相関している。
我々はそのような膠芽腫に対して200MeVの陽子線とX線を併用してGTVに96.4GyEの高線量照射を行う臨床プロトコールスタディーを行っている。現在までに病理診断された膠芽腫17例に本治療を行ってきたが、現時点での生存期間の中央値は20.4ヶ月であり、これはほぼ同期間に行われた64Gyエックス線治療群と比較すると4ヶ月以上延長している。 さらに、照射後に何らかの再手術が行われた症例を対象として、96.4GyE照射後の病理組織学的検討を行ってきた。これまでに7例の病理組織で、HE染色とともに、MIB-1、p53、アポトーシス、VEGF、LP3 の発現を免疫組織化学的に検討したが、96.4GyEの照射野内では細胞密度は低く、viableな腫瘍の再増殖所見は乏しくなっており、アポトーシスやオーとファジーの出現を認めた。 本治療法により膠芽腫患者の生存期間は従来と比較し延長しつつあるが、約70Gyの辺縁領域からの再発を認めており、陽子線による高線量照射に加え、他のモダリティーによる周辺のコントロールが今後の重要な課題である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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