日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: GO-051
会議情報

実験治療と治療生物学
NF-κB阻害剤Parthenolideの温熱増感効果におけるapoptosis誘導とp53遺伝子との関連
*林 幸子畑下 昌範松本 英樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
[目的] ハイパーサーミア治療における癌細胞の温熱耐性誘導による温熱抵抗性についてヒト肺腺癌A549細胞を用い細胞死に関与するNF-κBをターゲットとする生薬の成分Parthenolide (PTL)を用いて細胞の温熱増感効果を検討した。又そのメカニズムとしてPTLのNF-κB活性の抑制によるアポトーシス誘導への温熱耐性誘導物質hsp70蛋白および癌抑制遺伝子p53の関与を解析し、PTLのNF-κB機能の抑制によるカスパーゼ経路やJNK経路を介した温熱増感効果との関連を解析する。 [方法] 野生型p53及び変異型K-ras遺伝子を有するヒト肺癌A549細胞を用いて40℃、42℃あるいは44℃加温とPTLを連続併用し、温熱増感効果をコロニー形成法により検討した。また42-44℃ step-up加温にPTLを併用し、耐性誘導の抑制効果を検討した。hsp70及びp53蛋白誘導動態をwestern blot法により行った。PTL併用による温熱増感効果についてアポトーシス誘導動態を蛍光色素(Höchst33342)染色法により解析した。また同様にnecrosis誘導動態についても二重染色法により行った。 [結果] PTL及びハイパーサーミアは共に温熱化学増感効果を示した。A549細胞のstep-up加温(42℃-44℃)においてPTLは42℃加温による温熱耐性の誘導を抑制しその後の44℃加温の致死効果を増感した。western blot法によるhsp70蛋白は加温単独により著しく誘導されたがPTL単独によって誘導されず併用によっても温熱単独と比較し有意に変化しなかった。またp53蛋白はPTLによって誘導されず、温熱によって誘導され、それらの併用においては温熱単独との有意差は認められなかった。 [総括] 変異型K-ras遺伝子及び野生型p53遺伝子を有するヒト肺腺癌A549細胞における温熱抵抗性はNF-κBをターゲットとする生薬の成分PTLを併用することにより温熱増感効果が認められた。NF-κB活性の抑制によるアポトーシスあるいはネクローシスの誘導動態及び温熱耐性を誘導する蛋白hsp70及び癌抑制遺伝子蛋白p53の誘導について解析しNF-κBシグナル伝達経路への関与について検討した。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top