日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: FP-248
会議情報

低線量・低線量率の効果
マウス移植臓器の抗酸化機能に及ぼす照射条件と保存条件に関する基礎的検討
*片岡 隆浩中川 慎也水口 優子吉本 雅章川辺 睦田口 勇仁山岡 聖典
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】我々は今までにマウスへの低線量X線の事前照射により虚血-再灌流障害が抑制されることを報告してきた。また、臓器を移植した後に虚血-再灌流障害が生じること、虚血時にはATPレベルが低下することが報告されている。このため、本研究では低線量X線照射による移植臓器の抗酸化機能の変化特性について検討した。【方法】BALB/cマウスより摘出した肝臓にSham、0.25、0.5、1.0、あるいは5.0GyのX線をそれぞれ照射した。その直後から保存(Via Span)液または生理食塩水に4、8、24、あるいは48時間浸漬保存(4℃)し、抗酸化機能の分析をした。【結果例】1)浸漬24時間における照射線量依存性について。抗酸化系酵素であるSODとカタラーゼの両活性は、生食に浸漬した場合には0.25または0.5Gyで、保存液に浸漬した場合には1.0Gyで、それぞれ有意に増加した。抗酸化系物質であるグルタチオン量は、生食または保存液に浸漬した場合、それぞれいずれの照射線量でも有意に減少した。2) 0.5Gy照射後の浸漬時間依存性について。生食に、SOD活性は4または24時間、カタラーゼ活性は8時間以上、それぞれ浸漬した場合、ともに有意に増加した。また、グルタチオン量は、生食または保存液に4時間以上浸漬した場合、ともに有意に減少した。他方、過酸化脂質量は生食に8時間浸漬した場合に有意に減少した。【考察】摘出した肝臓に低線量X線を照射した場合、抗酸化機能が亢進することが明らかにできた。また、保存液にはグルタチオンが含有しているため、その分、SODやカタラーゼの活性を増加させる線量域が保存液の方が生食に比べ有意に高くなったと考察された。他方、生食または保存液に浸漬した場合にグルタチオン量は有意に減少したが、これはグルタチオンの合成にATPが関与するため虚血時のATPレベルの減少によりグルタチオン量が低下したのではないかと考察された。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top