抄録
[目的]温熱と高濃度10 mM nitroxide TempoによるU937細胞のcaspase-independent pyknotic cell death (CICD)を報告した (Zhao et al, 2006)。より低濃度5 mM Tempoと温熱によるcaspase依存アポトーシスの増感分子機構の探究。[方法]U937細胞をTempo (5 mM、10 mM)または温熱 (44°C-10分、44°C-30分)の単独、同時併用処理後、種々の細胞・タンパク分子学的方法によって機構を解析。[結果・考察](1) 5 mM Tempoまたは44°C-10分処理はU937細胞アポトーシスをおこさないが、両者の併用は処理後6 hで44°C-30分と同程度の70-80%に温熱アポトーシスを増強した。(2)その機構はBaxの活性化(Bax 6A7 mAb 免沈)とミトコンドリア(MT)への転位促進、cytochrome c (Cytc)の遊離によるcaspase-9-caspase-3の活性化であった。しかし、(3) biotin-zVAD-fmk前処理細胞の温熱・併用処理後の抽出液をstrepavidin pulldownすると、caspase-9活性化のみならず、Cytcに依存しないcaspase-8とcaspase-2のinitiator caspasesをも活性化するという新機構が明らかになり、この阻害剤は温熱と併用による誘発アポトーシスを有効に抑制した。(4) ゲルダナマイシンによるHSP70誘導は温熱細胞死を完全に阻害。(5) 44°C-30分、5 mM Tempo-44°C-10分処理後のMT膜電位低下はzVADで防げたが、10 mM Tempo-44°C-30分処理はzVAD抵抗性低下をおこし、Bnip 3のMT発現と関連してCICDの一因となった。